2003年3月14日金曜日

20(98) ゲーデルの哲学:2003.03.14

高橋昌一郎著「ゲーデルの哲学」
(ISBN4-06-149466-x C0241)
を読んだ。

面白かった。
ゲーデルの完成性定理と不完全性定理の概略が
なんとなくわかったような気がした。
しかし、詳細は、記号論理学が理解できないと
よくわからないはずだ。

「さらに難解さを増幅させるのは、
不完全性定理そのものが進化していることある。
たとえば、ゲーデルの証明で中心となったのは「ω無矛盾性」
とよばれる概念である。
それがロッサーの証明では「単純無矛盾性」に拡張され、
タルスキーの証明では「真理性」に変わり、
チューリングの証明では「計算可能性」が用いられ、
最近のチャイティンの証明では「ランダム性」になっている」

「発言と事実が一致すれば真であり、
事実の一致しなければ偽であると考えている。
この考え方は、「真理の対応理論」と呼ばれ、
論理学で一般に適用されているものである。」

「真か偽か決定できる事実は、「命題」と呼ばれる。
命題は、発言でも文でもなく、事実そのものである」

「命題の関係を研究する学問分野を、「命題論理」と呼ぶ」

「幾つかの前提から一つの結論を導くような形式に、
命題に並べることができる。
このような形式で命題が並んだものを「推論」と呼ぶ」

「モダス・ロレンス」(化言三段論法否定式)」

「推論の研究で重要になるのは、
前提が結論を論理的に導いているか否かの問題である。
論理学では、ある推論において、
すべての前提が真ならば結論も必ず真であるとき、
その推論を「妥当」と呼ぶ。
妥当な推論においては、
すべての前提が真であるにもかからわず、
結論が偽になることは不可能である」

「彼は(アリストテレス)、
思考の道筋を明確にしたかったのである」

「数学に「証明」の概念を最初に持ち込んだのが、
ピタゴラスなのである」

「ユークリッドが、幾何学を総合的に体系化した。
彼は、「公理」と呼ばれる命題から出発して、
論理的な推論だけを用いて、
「定理」と呼ばれる新たな命題を導くシステムを構築した。
このようなシステムを「公理系」と呼ぶ」

「これらの命題を、理性的な人間ならば、
誰もが疑いなく受け入れる「自明の共通概念」とみなした」

「公理1 同じものに等しいものは互いに等しい。
公理2 等しいもに等しいものを加えれば、全体は等しい。
公理3 等しいものから等しいものが 惹かれれば、残りは等しい。
公理4 互いに重なり合うものは互いに等しい。
公理5 全体は部分より大きい。」

「ユークリッドは、これらの公理に加えて、
「公準」とよばれる
幾何学的公理を定義し、それらを用いて、
465におよぶ数学的定理を証明した」

「ユークリッド幾何学は、
自然界の真理を表す「唯一」の幾何学とみなされてきた。
17世紀のニュートンは、
絶対時間・絶対空間を前提とする力学体系「プリンキピア」を構成し、
18世紀のカントは、
人間の時間・空間認識を「先天的形式」とみなす哲学を打ち立てた」

「ラッセルとホワイトヘッドは、
命題の主語・述語に相当する部分にも踏み込み、
量化された命題がも厳密に扱えるようにした。
これが、「述語論理」である」

「システムSのすべての証明可能な命題が真であり、
すべての反証可能な命題が真でないとき、
Sを「正常」と呼ぶ」

「証明可能あると同時に反証可能である命題がSに存在しないとき、
Sを「無矛盾」と呼び、
それ以外のときSを「矛盾」と呼ぶ」

「システムSの命題Xが証明可能か反証可能のどちらかであるとき、
XをSで「決定可能な命題」と呼び、
それ以外のときXをSで「決定不可能な命題」と呼ぶ」

「システムSが正常であるとき、真であるにもかかわらず、
Sは証明可能でない命題が存在する。
この命題を「ゲーデル命題」と呼ぶ」

「第一不完全性定理 システムSが正常である時、
Sは不完全である 」

「第二不完全性定理 システムSが正常であるとき、
Sは自己の無矛盾を証明できない」

自己言及から、ゲーデル命題が生じる
相互言及からもゲーデル命題が生じる

「ゲーデルは「証明可能性」はシステム内で定義できるが、
「真理性」はシステム内で定義できないことに気付いていた」

可能性・必然性を扱うのが様相論理
信念・意識について扱うのが認知論理
過去・現在・未来に対応する命題を扱うのが時制論理
判断・意見に関する命題を扱うのが義務論理

「様相論理は、古典的な命題論理あるいは述語論理に、
一個の未定義論理記号を加えるだけで、
これらの文の解釈を可能にするように公理化されたシステムである。
様相論理の意味論を変更することによって、
認知論理・時制論理・義務論理としても解釈できるようになっている」

「ヴィトゲンシュタインが導いたのは、
「語りうることは明らかに語りうるのであり、
語りえないことについては沈黙しなければならない」
という結論であった」

「「論理哲学論考」の基調にある「写像理論」は、
事実の総和としての世界と、命題の総和としての言語に、
真理の対応関係が存在することを前提としている」

「カントールは、「数学の本質はその自由にある」と述べたが、
直感主義は、その「自由」を数学者自ら放棄する主張とも考えられた」

ゲーデル・ロッサーの不完全性定理
Sは、真でもあるにかかわらず決定不可能な命題Gを含む。
さらに、Sの無矛盾性は、Sにおいて証明不可能である
不完全定理の哲学的帰結
全数学を論理学に顕現することは不可能である。
全数学を公理化することは不可能である。

ゲーデル・タルスキーの不完全性定理
Sの真理性は、S内部では、定義不可能である。

ゲーデル・チューリングの不完全性定理
すべての真理を証明するチューリング・マシンは、存在しない。

チャーチ・チューリングの提唱
計算可能性は、チューリング・マシンの計算可能性と同等である。

人間機械論の仮説
思考は、アルゴリズムに還元できる。
人間は、ちーリング・マシンである。

チャーチの非決定性定理
任意のチューリング・マシンが何かを導くかを
事前に決定するアルゴニズムは存在しない。

チューリングの停止定理
任意のチューリング・マシンがいつ停止するかを
事前に決定するアルゴニズムは存在しない。

反人機械論の仮説
思考は、アルゴニズムに還元できない。
人間はチューリング・マシンを上回る存在である。

ゲーデル・チャイチンの不完全性定理
任意のシステムSにおいて、
そのランダム性を証明不可能なランダム数GがSに存在する。