2002年1月25日金曜日

9 遥かなるケンブリッジ:2002.1.25

藤原正彦「遥かなるケンブリッジ 一数学者のイギリス」(ISBN4-10-327404-2 C0030)を読んだ。面白くて一気に読んだ。
数学者の著者が、家族を連れて、1年間ケンブリッジ大学に滞在したときの記録である。単に滞在記、エッセイというより、イギリスの文化、国民、歴史を評論している。
イギリス人は、fairを尊ぶ。辞書の、公平な、公正な、適正な、正当ななどとは少し違っているという。「フェアーであることを、イギリス人は絶対的なことと考え、アメリカ人は重要なことと考え、ヨーロッパ人は重要なことの一つと考え、日本人は好ましいことと考える」
ジェントルマンの慎み深さを表す会話として、相手の父のことを優秀な科学者ですかと、著者が尋ねると「そうかも知れない。一応はノーベル賞をもらってるから」と、慎み深く答えたという。
著者は言う、「イギリス人は何もかも見てしまった人々である。かつて来た道を、また歩こうとは思わない」と。それは、大英帝国、近代民主主義の栄華を謳歌し、そして現在に至っている。その後、同じような経路をイギリス人は取らないというのだ。含蓄のある言葉である。